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記英国工党與社会党之関係 (楊守仁)      

(英国労働党と社会党との関係について)

 

F

今まで見てきたように、注目すべきは、独立労働党と社会民主政治党とが、無政府党とあい提携していることである。

 英国独立労働党は議会で四十以上の議席を占めていて、自由・統一両党の政策に影響を与えることができる。この党の目的は、専ら労働者階級の利益を代表することにある。

 社会民主政治党の目的は、共和政体を建設すること、王制と貴族制とを廃止することである。議会には勢力を持っていないものの、三十数紙の新聞社に人脈があり、党勢の伸長を目指して努めているので、今後の展開については未知数である。

 英国統一党は、上流社会が支持層の中心をなしていて、保守性が強い。

 自由党は、労働党と統一党との中間に位置する。

 自由・統一両党の目的は、社会民主党の目的とは決して相容れないものである。そして無政府党の過激な論旨とは、全く並び立つことはなく不倶戴天である。

 急進派の中から独立労働党を除外しても、まだ社会民主政治党が存在する。さらに社会民主政治党を除外しても、無政府主義党が残る。

 独立労働党と社会民主政治党とは、国民に警鐘を鳴らすために、無政府党員と無神論とをよく紹介する。

 イギリスの思想界の歴史は、大変複雑である。

 目下の上議院改革問題に見る思想的混乱などは、ただ政治においてのその影響の、あらわれにすぎない。 

 

 

G

無政府主義は真理を尊重するが故に、宗教を否定する。絶対自由を主張するが故に、政治・法律を否定する。政治・法律を否定するが故に、かつまた(同時に)お為ごかしの(偽りでかこつけた)愛国心を否定する。共産主義を尊重するが故に、個人の財産権を否定する。自然状態(あるべき姿)を尊重するが故に、現在の社会の制度を否定し、婚姻の制度を否定する。

 一例を挙げる度に、現在信奉されている国家学説、経済学説、倫理学説を、完膚なきまでに叩きのめし、一掃するだろう。

 バクーニンは言った。愛国心は、独善かつ排他的な悪習に過ぎないと。

 戈邁(カーマイケル?)は言った。「我々は、はっきりと悟るべきだ。いわゆる愛国心というものは、お為ごかしであると。そうすれば我々は、一本の道を切り拓くことができるだろう。その道はすなわち、万国を無政府となし、世界中の人々が友人・兄弟となるユートピアにするための道を」と。

 英国無政府政党が、この真理に基づいて著したパンフレットがある。題名は『愛国心は自由を威嚇する』。パンフレットの表紙の絵は、一人の魔女が愛国の軍旗を掲げ、自由神であるところの美貌の少年が魔女の足の下に踏み敷かれ、平伏して憐れみを乞うているという図である。

 そして一九〇七年、独立労働党年会報告中に、こう述べられている。「愛国心は一種の武器である。この種の武器は、常に民を損ない、だまくらかすために使われるものである。国民を混乱に陥れて、事実から目を逸らさせ、是非の判断を顚倒させるために」

 また、去年(一九一〇年)十一月、英国社会党青年弘道会が考克斯敦(カークストン?)でクリスマスに設けた売店で、社会党日曜学校のために金策をしたが、ここで発行した機関紙『少年労働者』にいう。

 「男女の少年労働者の多くは、インチキ愛国者やタチの悪い政治ゴロのお為ごかしの「愛国心」に惑わされているようだ。その結果、いたずらに自らの生命を投げ打って、国民を損なう輩の走狗・手先・武器・道具となってしまっている。そして、自由を蹂躙する魔物の巣窟で、尻尾を振って哀れみを乞うている」と。

 ある英国人が言う。およそ社会党青年弘道会の日曜学校でこう考えない者はいない。リバプールの独立労働党支部には無政府党の学校があるが、ここでの啓発活動はとりわけ過激であると。

 

 

 

 


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