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記英国工党與社会党之関係 (楊守仁)      

(英国労働党と社会党との関係について)

 

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「法律及び政治上の権力については、これを一切否定し打倒する」というのが、無政府党の社会や事件に対するあり方である。

 

 一つのあり方は、個人所有の財産権を一切否定することである。クロポトキンはこれを「蒸発」(Exhalation)と名づけている。

 

 もう一つのあり方は、現行の婚姻制度を打破することである。現行の婚姻制度は、不自然で不道徳なものだとクロポトキンはいう。

 

 この説は、社会主義を奉ずるイギリス人が、歓迎するところである。社会党員・ベーベルが著した『婦人』(『婦人論』)という書は、同じく社会党員の們特夫爾氏の手により熱心に紹介されていて、ハイドでは日曜学校の教科書にされているほどである。

 

 「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という無政府党は、余勢を駆って宗教をも攻撃している。

 クロポトキンは言う。我々は今、法律・権力・宗教の三位一体の迷信に対し、明白に宣戦する。宗教の起源は全く迷信に由来するものであり、社会が未開で人間の精神も未熟であったため、宇宙の真理を理解できずに、この種の迷信が成立したのである。ひとたび迷信が排斥されれば、人倫道徳の原則は自ずと、宗教なるものが猛毒であることを明らかにするだろう。人類の道徳が腐敗する根本原因は四つあり、宗教はその一つである。未来世界の自由公益団体は、どこに行っても必ず、いわゆる上帝(=神)を否定するだろう。

 

 無政府党がこの原則に基づくがゆえに、英国社会党の指導者もまた、さかんに無神論を鼓吹している。

 独立労働党の書記員・魏哈君は、一篇の小論文を著して言う。「いわゆる宗教なるものには、一つも取るに足るところがない。宗教はすべて超自然的な力や神託を根拠とするがゆえに、真実は一つもない。一神教が世界に広まったのは、単にある種の災いの種を播いたに過ぎない」と。

 『クラリオン』紙はおそらく十万部前後の部数が売れていて、魏哈君の著書も既に版を重ねている。

 社会民主政治党機関紙『公道』に、女性党員の們特夫爾氏の論文が掲載されたが、論旨は両氏と同じであった。

 その他の社会党の野外演説でも、この義を奉ずる者は数知れない。

 

 

ゆり子註

 「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」

原文は「射石設羽」だが、これは「射石没羽」の誤りだろう。ごんべんとさんずいとは、くずすと紛らわしい。「射石没羽」は『諸橋大漢和辞典』に拠れば、「石を虎と思って射たところ、やばねまで没したこと」で、「熱誠の心は何事も成就する喩」とのこと。『漢語大詞典』では、「勇猛で弓術がうまいことをいう」と。日本の諺で相応するものというと「一念岩をも通す」くらいだろうが、これでは前後の文脈からは意味がずれる。従って、思い切って意訳することにした。

 

 

 

 

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