トップへ

はじめに へ @ACDEFGHIJKLMNOPQRS㉑㉒

 

記英国工党與社会党之関係 (楊守仁)      

(英国労働党と社会党との関係について)

 

B

イギリス人は保守的で、その宗教を信仰することは、大陸諸国の国民よりも非常に熱心である。

 大陸諸国では社会主義が急激に広まっており、中でも無政府主義を主張する者たちは、イギリス人の思想とは、相容れないように見える。

 

 大陸諸国で社会主義及び無政府主義を主張する者は、非常にイギリス人を馬鹿にしている。

曰く、「若者の頭脳は遊びとスポーツとで疲れ果てていて、老人のそれは牧師の説教で困憊している」と。

 

 しかしイギリス人の政治のあり方には、他のどの国よりも優れた点があるように思われる。

 

 その国民は、思想の自由を尊重することができるので、出版・言論・集会の三大自由は、堅固に保障されている。身の安全が保障されることは、特に甚だしい。

 

 各国の無政府党は一様に、英国を避難所として頼りにしているので、英国人が彼らの無政府主義の潮流を吸収するのもまた、自然の成り行きである。

 

 しかるに今に至るまで、英国人はこの事(無政府主義の流入)に対し、どんな制限をも安易に加えようとはしない。

 思うに、思慮深い政治家が、以下のようなことをよく知っていたのであろう。国民の思想をよく導くには、折々に進歩や革新のあった分野で、時代と歩みを共にさせ、追いかけて触れさせるべきだと。

 そうすることの利益は、深い山奥に黙って座り、深く心を閉ざして頑なに変化を拒むというあり方よりも、はるかに勝れている。

 

 こうした国の方針のおかげで、英国人は、新思潮に対して泰然としていられ、次のような悪弊に陥らずにすんでいる。すなわち、外国の新奇な思潮に目が眩み、いたずらに憧れるということ。

 

 英国の優れた賢人の遺風は、まだこの国には息づいているらしい。

 

 

 

 

 

Cへ

 

 

トップへ