トップへ

 

書籍の紹介

わたしのような者が「書籍の紹介」というのもいささかおこがましくはありますが、

乏しい経験の中から、読んでおくとよい本、あると便利な本をあげてみました。

 

★編成の都合上、同じ本が繰り返し出てきます。

★文庫、新書版がある場合は、そちらをあげました。

★現在のお寒い出版状況ゆえ入手困難な本もあります。図書館、古書店等をあたってください。

★中国書は最低限の基本的なもののみにしました。

 

 目次

  近代史 楊毓麟関係 陳天華関係 宋教仁関係 その他の近代史 近代史学習のための経学 啓蒙思想など

  文学 その他

 

  近代史

楊毓麟について(日本書)

書 名

著者・編者等

出版社

出版年

 

原典中国近代史第三冊

辛亥革命

編・西順蔵

岩波書店

1977

「新湖南」の抄訳を所収。

同盟の時代

中村哲夫

人文書院

1992

中村氏の論文集。「華興会と光復会の成立」などで楊毓麟に言及、というより関鍵人物扱い。

清末中国の青年群像

横山宏章

三省堂

1986

楊毓麟のほか、呉樾、鄒容、陳天華等を紹介。たいへんおもしろい本で、とっつきはよいが、著者の個性が強いため要注意かも。

楊毓麟について(中国書)

書 名

著者・編者等

出版社

出版年

 

楊毓麟集

編・饒懐民

岳麓書社

2001

論著、時評など種類別に。家書や詩、小説も。

武昌革命真史

曹亜伯

上海書店

1982

曹亜伯が1927年に書いた回想録。楊毓麟の伝記はここにあるのが一番くわしい。

辛亥革命前十年間時論選集

 

三聯書店

196277

1901年から1911年までに雑誌や新聞などに発表された時評類を集めたもの。『新湖南』の全文もある。

辛亥革命時期期刊介紹

丁守和

人民出版社

198286

19C末から辛亥直後までの雑誌、新聞などを紹介。楊毓麟関連では『游学訳編』、『神州日報』、『民立報』など。

陳天華について(日本書)

書 名

著者・編者等

出版社

出版年

 

中国革命の先駆者たち

島田虔次

筑摩叢書

1965

「絶命書」全訳、「獅子吼」抄訳。

辛亥革命の思想

編・島田虔次 小野信爾

筑摩叢書

1968

「警世鐘」の全訳。

原典中国近代史第三冊

辛亥革命

編・西順蔵

岩波書店

1977

「絶命書」(附・宋教仁による跋文)の全訳。

中国革命

現代革命の思想3

山田慶児

筑摩書房

1970

「猛回頭」の全訳。

清末民国初政治評論集

中国古典文学大系58

 

平凡社

1971

 

「敬告湖南人」、「論中国宜改創民主政体」の全訳。

同盟の時代

中村哲夫

人文書院

1992

中村氏の論文集。「陳天華の革命論」など。

清末中国の青年群像

横山宏章

三省堂

1986

陳天華のほか、楊毓麟、呉樾、鄒容等を紹介。たいへんおもしろい本で、とっつきはよいが、著者の個性が強いため要注意かも。

陳天華について(中国書)

書 名

著者・編者等

出版社

出版年

 

陳天華集

編・劉晴波

湖南人民出版社

1982

書かれた順に編んである。1898年の「述志」から「絶命書」まで。

陳天華集

編・劉晴波,彭国興

湖南人民出版社

2008

増補版。「要求救亡意見書」を追加。詳しい伝記も。

武昌革命真史

曹亜伯

上海書店

1982

曹亜伯が1927年に書いた回想録。

宋教仁について(日本書)

書 名

著者・編者等

出版社

出版年

 

宋教仁の日記

訳・松本英紀

同朋舎出版

1989

宋教仁の留学日記「我之歴史」の全訳。詳細な註がうれしい。

宋教仁の研究

松本英紀

晃洋書房

2001

いずれも宋教仁関係を主とする個人論文集。

宋教仁研究

片倉芳和

清流出版

2004

宋教仁について(中国書)

書 名

著者・編者等

出版社

出版年

 

宋教仁集

編・陳旭麓

中華書局

1981

書かれた順。 「我之歴史」の全文も。

宋教仁的政黨政治思想研究

宋月紅

洪業文化事業有限公司(台湾)

2005

仮りに二冊あげてみた。再評価が進んでいるのか、彼関連の本をよく目にするようになっている気がする。小まめに書虫などをのぞいてみるといいかもしれません。

中国近代政党思想研究

陳宇翔

湖南大学出版社

2003

辛亥革命について概説書、その他(日本書)

書 名

著者・編者等

出版社

出版年

 

中国近現代史 上巻

姫田光義 小島淑男他

東京大学出版会

1982

アヘン戦争以降の中国史の、絶好の教科書です。

辛亥革命

野沢豊

岩波新書

1972

↑の本であらましをつかんだ上で、なお食い足りないと思ったらこちらを。刊年が古いなんて気にしてはいけない。重要なところは大体得られます。禹之謨にも言及。

中国革命の先駆者たち

島田虔次

筑摩叢書

1965

梁啓超、陳天華、黄宗羲、章炳麟を紹介。

辛亥革命の思想

編・島田虔次 小野信爾

筑摩叢書

1968

鄒容「革命軍」、胡漢民「『民報』の六大主義」などの全訳。

原典中国近代史第三冊

辛亥革命

編・西順蔵

岩波書店

1977

呉樾「暗殺時代」の抄訳、鄒容「革命軍」の全訳など。

原典中国近代史第二冊

洋務運動と変法運動

編・西順蔵

岩波書店

1977

譚嗣同「仁学」の全訳のほか、康有為、厳復など。唐才常の「自立会規約序文」も。

中国革命

現代革命の思想3

山田慶児

筑摩書房

1970

ちょっと変わった構成。呉樾「暗殺時代」、孫文「同盟会宣言」などから毛沢東までの訳文。

清末民国初政治評論集

中国古典文学大系58

 

平凡社

1971

 

公羊派から太平天国、洋務派、変法派、革命派を経て、新文化運動までの重要な文章の邦訳。

清国人日本留学日記

 1905〜1912

黄尊三

 

東方書店

1986

宋教仁と同じ湘西出身で宋とも親しかった黄尊三の留学日記。革命家ではない(シンパではあるが)普通の留学生の生活がうかがえる。残念ながら抄訳。

偉大なる道

スメドレー

岩波文庫

1977

スメドレーの聞き書きによる朱徳の伝記。朱徳は鄒容とほぼ同年齢で、辛亥期には雲南の新軍で蔡鍔の部下だった。

仁学

譚嗣同

岩波文庫

1989

譚嗣同の主著の全訳。多少面食らうがおもしろい。

章炳麟集

編訳・西順蔵、近藤邦康

岩波文庫

1990

章太炎の主要論文24篇の訳。

清末民初文書読解辞典

編・山腰敏寛

汲古書院

1989

こんな工具書もちょっと便利です。公文書や手紙の書き方まで載っています。

科挙

宮崎市定

中公新書

1963

近代史の本というわけではないが、科挙の完成型(?)である清代に重きを置かれているので。

この特異な制度については知っておく必要がある。志士のみなさんは科挙体制下の知識人で、大半は紳士だから。

  近代史(中国書)

書 名

著者・編者等

出版社

出版年

 

辛亥革命回憶録 一〜八

 

文史資料出版社

1982

いろいろな人の回想を集めたもの。劉道一と会党の頭目との会見とか、撃たれる当日の宋教仁の様子など、生々しい証言もある。

武昌革命真史

曹亜伯

上海書店

1982

曹亜伯が1927年に書いた回想録。「今どきの若いもん」に辛亥革命の何たるかを知らしめようというのが、執筆の動機だとか。

辛亥革命前十年間時論選集

 

三聯書店

196277

1901年から1911年までに雑誌や新聞などに発表された時評類を集めたもの。『新湖南』の全文もある。

辛亥革命時期期刊介紹

丁守和

人民出版社

198286

19C末から辛亥直後までの雑誌、新聞などを紹介。

中国近代官制詞典

主編・邱遠猷

北京図書館出版社

1991

こんな工具書もあると便利です。清朝、太平天国、北洋軍閥の官制を調べられます。

近代史学習のための経学(日本書)

書 名

著者・編者等

出版社

出版年

 

礼記

新釈漢文大系

竹内照夫

明治書院

 

1977

国人≒郷紳層の精神の原像を掴むには必読の書。「礼運」は康有為の主著『大同書』を生んだ。

春秋左氏伝

新釈漢文大系

 

鎌田正

明治書院

1974

数社から訳文が出ているが、やはり原文のあるこのシリーズがよい。訳者によって解釈の違う箇所が多いから、結局は自分で読まねば。

国語

新釈漢文大系 

大野峻

明治書院

1978

その成立に『左伝』と深い関わりをもつと推測されている。『左伝』と合わせて読むべき書。

論語

訳注・金谷治

岩波文庫

1963

言わずと知れた、孔子師弟の言行録。いろいろな人が出しているが、この金谷訳は余計な色が少ないと思う。

詩経国風

白川静

平凡社 東洋文庫

1990

詩経の全訳。詩が詠われた本来の意味をとったもの。

などと当然のことをわざわざことわるのは、そうでない読みが存在したため。

詩経雅頌

白川静

平凡社 東洋文庫

1998

詩経国風

吉川幸次郎

岩波書店

1958

経学にがんじがらめにされた旧い解釈による詩経国風。白川訳と比べると唖然とするが、清末の知識人たちの常識はこちらだから、こちらも知らねば。

詩経

海音寺潮五郎

中公文庫

1989

 

原著は1974年(講談社刊)。白川静先生もおもしろがっておられる海音寺訳。旧来の解釈に拠っているが、確かにおもしろい。案外、真実に近いかもしれないものもある。

朱子学と陽明学

島田虔次

岩波新書

1967

「明治維新は陽明学によって成された」と誰かが言い出してから、清末の志士の間で陽明学が流行ったとか。宋教仁も熱心に研究しているし、楊毓麟は守仁と改名している。もともと湖南は朱子学の強い土地。基本的な考え方は理解しておくとよいと思う。なお、『大学・中庸』の原著は1967年刊。

大学・中庸

島田虔次

朝日文庫

1978

近代史学習のための経学(中国書)

書 名

著者・編者等

出版社

出版年

 

春秋公羊伝訳注

王維提 唐書文

上海古籍出版社

1997

原文に現代中国語訳が附されている。ただし、原文も簡体字。公羊伝、穀梁伝には手頃な邦訳がないので、これで読むよりしかたない。

春秋穀梁伝訳注

承載

上海古籍出版社

1999

左伝訳注

李夢生

上海古籍出版社

1998

啓蒙思想など(日本書)

書 名

著者・編者等

出版社

出版年

 

社会契約論

ジャン・ジャック・ルソー

角川文庫

1965

この書を抜きにして、近代も革命も語れない。必読中の必読の書。民権期の多摩の豪農の子弟の如く、自ら写本することが望ましい。

岩波文庫の桑原訳は評価できない。

エミール

ジャン・ジャック・ルソー

岩波文庫

1964

おそらく、清末の革命家たちが、最も理解の足らなかった部分ではないか。政治制度の変革だけでは、新しい社会は到来しないということを、考えさせられる。人間の作り方の書といってもいい。

フランス革命史

ジュール・ミシュレ

中央文庫

2006

ミシュレ(17981874)の「フランス革命史」の抄訳。クロポトキンも高く評価している。英雄はいないし、いらない。

1968年刊の『世界の名著』シリーズから文庫化。

フランス革命

柴田三千雄

岩波現代文庫

2007

研究史をまとめてくれているので、初学者が読む本として恰好だと思うが、その前に概略くらいは知っておかないと無理か。

一七八九年〜フランス革命序論

G・ルフェーヴル

岩波文庫

1998

文句なしの名著。いくら通史を読んでも分からない肝腎なところが、これを読むと分かります。お話ではない、本物の歴史。

ところで、ミシュレは曙の人だからか↑の柴田著では無視されているが、その「革命は信仰によってなされた」というのが、ルフェーヴルを読むと不思議と腑に落ちる。

革命的群衆

G・ルフェーヴル

岩波文庫

2007

中江兆民

 日本の名著36

 

中央公論社

1984

『民約訳解』ほか、「東洋のルソー」と呼ばれる民権運動の理論的指導者、兆民の主要論文を収録。留日学生たちも兆民は読んでいる。

ロシア革命運動の曙

荒畑寒村

岩波新書

1960

ロシアのナロードニキについて知るには格好の書。言うまでもないことだが、ナロードニキのナロードニキたる所以は、爆弾テロではなく、「ヴ・ナロード=人民の中へ」という思想にある。「中国のナロードニキ」と言われる楊毓麟も、単なるテロリストではない。

仏蘭西革命史

クロポトキン

改造文庫

1931

アナキスト嫌いのレーニンが絶賛したフランス大革命史。視点が定まっているから、通史より分かりやすい。

相互扶助論

 大杉栄伊藤野枝選集8

クロポトキン

黒色戦線社

1987

原著は1902年だが、1890年頃から少しずつ発表された。クロポトキンの主著の一つ。進化論、動物行動学、文化人類学、欧州中世社会史がつまっている。まだ今西進化論も人類学も社会史もなかったのに。気をつけて読まねばならぬが、非常に示唆に富む本。

クロポトキンの思想は、一世を風靡した時期がある。楊毓麟も英国でクロポトキンを読んでいる。

ある革命家の手記

クロポトキン

岩波文庫

1979

クロポトキンの自伝。手に汗握る脱獄劇もあります。

秩父事件

井上幸治

中公新書

1968

フランス大革命の研究者の井上氏は秩父出身。秩父事件への関心から、フランス史研究に至ったらしい。

秩父事件参加者の読んだ『佛国革命史』を楊毓麟も読んだかも。

 

   文 学

書 名

著者・編者等

出版社

出版年

 

中国名詩選

松枝茂夫

岩波文庫

1986

詩経から毛沢東まで網羅しているので、誰が好きか探すのに格好の書。

李長吉歌詩集

訳・鈴木虎雄

岩波文庫

1961

どの訳で読むか、これはもう、好みの問題だと思う。

(細かい考証は素人にはわけがわからぬから)

わたしとしては、荒井、斉藤が好きかもしれない。

李賀

 中国詩人選集14

訳・荒井健

岩波書店

1952

李賀

 漢詩大系13

訳・斉藤

集英社

1967

蘇小小の歌(李賀詩編1)

独吟聯句(李賀詩編2)

北中寒(李賀詩編3)

訳・原田憲雄

平凡社 東洋文庫

1999

李賀詩選

訳・黒川洋一

岩波文庫

1993

楚辞

橋本循

岩波文庫

1935

なにしろ古いので、現代語訳が全然現代語ではない。

滄浪のうた 屈原

 中国の名詩2

目加田誠

平凡社

1983

『楚辞』から、「離騒」、「九歌」の全訳など。肝腎の「天問」が冒頭しかないのが残念。

楚辞植物図鑑

潘富俊・呂勝由

上海書店出版社

2003

楚辞に出てくる植物をきれいな写真で紹介した図鑑。台湾の猫頭鷹出版社の本を簡体字に直したもの。簡体字が苦手な方は台湾版をどうぞ。『詩経植物図鑑』、『唐詩植物図鑑』もある。

詩経

白川静

中公文庫

2002

これは訳ではなく紹介。原著は72年。万葉と比較しながら詩経の世界を解りやすく説く。

黎明のうた 魯迅・毛沢東

 中国の名詩9

今村与志雄

平凡社

1982

近代(アヘン戦争以降)の古典詩。林則徐、譚嗣同、唐才常、黄興、宋教仁、周恩来など。南社の柳亜子による楊篤生の追悼詩もある。

 

  その他(あまり関係ないけど、わたしにとって重要な本)

書 名

著者・編者等

出版社

出版年

 

モンゴル革命

磯野富士子

中公新書

1974

少数民族から見た辛亥革命、などという妙な観点を得たのは、十八か九で読んだこの二冊による。

草原の革命家たち

田中克彦

中公新書

1973

フィリピン・ナショナリズム

コンスタンティーノ

井村文化事業社

1977

二十歳の頃、フィリピンという国の不思議な成り立ちにひかれ、その民族意識の形成を知りたいと思った。力及ばず未だに謎だが、考え方を一つ学んだ気はする。

明治精神史

色川大吉

講談社学術文庫

1976

うまく言えないが、たぶん精神の深いところで、少なからぬ影響を受けていると思う。

眉屋私記

上野英信

潮出版社

1984

筑豊に蟠踞した上野英信の、記録文学の集大成といってよいと思う。これは筑豊ではなく、沖縄とキューバやメキシコだが。

こんな近代史もあるのかと、強い衝撃を受けた。

ロシア文学の理想と現実

クロポトキン

岩波文庫

1985

アメリカで行った講演を元にしている。彼の文学観、価値基準が驚くほどわたしと一緒なのでうれしい。

孔子伝

白川静

中公文庫

1991

原著は1972年刊。わたしはこの本を読んで、古代史をやるのもいいかなと思うようになった。

中国の神話

白川静

中公文庫

1980

原著は1975年。神話を集めたお話集ではなく、諸族が「中華民族」に統合されていく過程を描いた史書。

読書と社会科学

内田義彦

岩波新書

1985

本の読みかた、学問のしかたの根本を説く。語り口はやさしいが、実践は難しい。この本すら速読してしまう「才子」は多いのでは。わたしは速読はできないが、それでもザルだ。

幼年時代

ゴーリキー

岩波文庫

1968

ゴーリキーの自伝的三部作。彼の最高傑作だと思う。自慢話(貧乏自慢、苦労自慢を含む)でも言い訳(自己肯定)でもない自伝は珍しいのではないか。

世の中へ出て

ゴーリキー

岩波文庫

1972

私の大学 他

ゴーリキー

改造文庫

1936

 

 

  2007年3月26日(初稿)

  2010年10月9日(4冊追加〜陳天華集、柴田、ルフェーヴル)

 

トップへ