明治三十八年(1905年)十二月十六日

 

●省令の解釈(清国留学生に関する)

文部省令第十九号に関する清国留学生の紛擾に就きては法政大学、東京同文書院、東斌学堂、早稲田大学清国留学生部、大成学館経緯学堂、弘文学院、東亜実業学校、成城学校等の諸学校会議の上畢竟其原因は学生が省令の精神趣旨を誤解したるに基く所少からざることを察し更に文部省にも質す所あり能ふ限り実情を明かにして其誤解を除くことに努め斯くても尚疑惑を釈くこと能はずして帰国を企つる者に対しは遺憾ながら其意に任すの外なく尚止まりて引続き修学せんとするものに対しては従来の通り教授することゝせし由なるが各学校が文部省より聞き得たる説明及文部省が各学校に配布せる説明書によりて其学生及一般留学生に誥げんとする所は大略左の如し

一、文部省令第十九号「清国人を入学せしむる公私立学校に関する規程」の精神は毫も清国留学生の自由を拘束せんとするものに非ずして之を入学せしむる学校を監督し留学生の利益を図るを目的とす此規程中留学生に関係ある規定は(中略)日本の学生を入学せしむる学校に対するものゝ一部に該当し一面日清間に何等差別を設けざると同時に他面に於ては本邦学生に与えざる便宜を清国留学生に与ふるの余地あること毫も従来と異なることなし世上或は此規程を清国留学生取締規則と称するものあるが如きは便宜上より若くは誤解より来れるものに過ぎざるなり

一、同省令第一条は入学願書に本邦所在の清国公館の紹介書を添附せしむべきを規定せりと雖も是れ必ずしも公使館又は領事館の直接の紹介書を要すとの義に非ず文部省は苟くも清国公使館に於て確実なりと認めたる清国人(留学生会館幹事等)の紹介書は同一の効力ありと認む故に留学生は此規程によりて些の不便を感ずることなかるべし

一、該省令第三条に規定せる「往復書類綴」の備付に就て留学生中或は信書の秘密を侵害さるゝが如く解釈するものありと雖是れ甚しき誤解にして条文の明示する如く学校に於ける校務上の往復書類を保存す可しとの規定なり毫も学生の私信に関するものに非ず(後略)

一、(略)

一、(略)

一、第九条は文部省が自ら解釈せるが如く留学生をして安全なる勉学を得せくむるが為め学校をして下宿屋を取締らしむるを目的とするものにして前記各学校が選定を受けたる場合に於ても此規定の適用は単に風紀衛生等の点に就て下宿を監督するに過ぎず加之文部省は自炊其他の方法に依れる共同宿所の如きは寧ろ適当と認むるが故に留学生は此規定に依りて何等の不自由を感ずるの理由あるべからず

一、第十条は品行を紊り刑律に触るゝ等不良の行為あるが為めに他の学生に不良なる感化を及ぼすの虞れあるものを入学せしめざるを目的とし日本人の学生に対しても亦此規定あり(中略)されば正当の理由に基く退学転学は固より之を拒むものに非ず而して此に謂ふ所の性行不良なりや否やは学校の認定する所にして清国公館又は文部省の与る所に非らず

一、第十一条の規定は日本学生を入学せしむる私立学校認定規則第三条と同一の趣旨に出でたるものにして日清人の間に差別を設くるものに非らず

 

 

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