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多摩丘陵から 〜日記のようなもの
2018年5月 3日 4日 11日 20日
●5月3日(木)
憲法記念日であり、小尻記者と犬飼記者とが撃たれた日。
先月29日の日曜日、モノレールのセット券を買って高幡不動尊から昭和記念公園へ……というコースを考えたのだが、多摩センターで切符を買おうとしたら、昭和記念公園だけが発売中止だった。妙だなと思いながら、あちこち乗り降りするからと、普通の一日乗車券を買った。
電車に乗ってから、嫌な予感がした。今日は日曜日だと思っていたが、ひょっとして4月29日? まさか昭和記念公園は入園無料の日じゃあるまいか? だとしたら混雑する? でも、あれだけ広大な公園だから大丈夫か?
不安を抱えつつ、まずはお不動さんへ。いつものとおり、和やかな賑わい。
再びモノレール。途中の車窓から、民家のような所に人だかりができているのが見えた。土方歳三の生家で、資料館になっているらしい。人気あるのね。
立川北駅でたくさん降りるのは当たり前なのだが、嫌な予感がしていたので、途中でパンを買っていく。公園までの道では異変は感じなかったが、公園のとっつきから入場口まで。人の列が続いているのに驚く。あとで分かったのだが、駐車場がいっぱいだった。車で来る人が多いのだろう。
門まで来ると、思ったとおり入場券売り場の窓口は閉まっていて、「昭和の日」で無料との貼り紙が。
みんな、無料は好きだよね。わたしだって「無料」とか「お得」とかは大好きだ。
でも、人ごみへの厭悪はそれよりも強い。毎日満員電車に乗って、新宿駅構内の縦横斜めの雑踏を泳ぎ渡っているけれど、だからこそ混雑は嫌いだ。
それでも中へ入ってしまえば、なにしろ広大だから、なんとかなるだろう。
そう思ったのに、どこまで行っても人の列。前に来たときと全然ちがう。おまけに季節外れの炎天下。わたしは日傘があったが、夫は帽子を持ってこなかった。昼時だから太陽が高く影が短い。
売店やレストランは案の定たいへんなことになっているから、パンを買ったのは正解だったが、それを食べる場所がない。きょろきょろしながら歩くが、ベンチはどれもうまっている。シートがあれば木陰の芝生で食べられるが、その用意もなかった。
ところが夫が奇跡的に席を見つけてくれた。それも、なんとテーブル席。でも、困っている人たちがいるから、ゆっくりもできず、そそくさと食事を済ませて席を立つ。
ちょっと歩いたけれど、どこも人が多いし、天気もひどすぎる。この日射は、夫の命にかかわる。日を改めて出直すことにして、出口へ向かう。
つまらないし、せっかくの一日乗車券なのだからと、終点まで乗ってみることにする。
終点は上北台。ここから多摩湖まで歩けるはずなのだが、どのくらいかかるか分からないし、なによりこの炎天を歩くことには恐怖を覚える。
相談の結果、駅の周辺をぐるっと歩いただけで、帰ることにした。
帰りは運転席の後ろの二人掛けの席。運転士さんと同じものが見られる、子どもに人気の席だが、わたしたちは気楽だから選んだので、別に最後尾の同様の席で良かった。本当は最後尾のつもりで間違えて座っただけ。
通路をはさんだ同種の席には、ちっちゃい男の子がお父さんと一緒に座り、喜んでいる。やはりここは鉄ちゃん養成席なのか。
途中から小さい男の子が乗ってきて、先に座っていたお父さんが「お友だちにも座らせてあげようね」と、つめるか膝に乗せるかしていたけれど、わたしたちは半分眠っていた。
それでもかわいそうになって、終点ひとつ手前の駅を発ったところで、席を立った。
帰ってから調べると、上北台から多摩湖までは、たいした距離ではなかった。こんな天気ではないときに、また行ってみよう。多摩湖から狭山湖へぬけ、西武線で帰って来ようか。
狭山湖へは、小学校1年か2年の遠足で行った。あの頃は狭山湖駅だった。その後、西武がライオンズを買って、西武球場前なんていう無粋な駅名に変わってしまったが。
本当に、近いうちに行ってみよう。村山貯水池と山口貯水池と。
●5月4日(金)
所用で白山に行ったので、ついでに小石川植物園へ。
入園料を払おうとしたら、受付の人が驚いて「今日はみどりの日で無料です」と。
昭和記念公園に次いで、また無料の日に当たってしまった。驚かれたということは、みんな知っていて来ているんだね。
桜の木の下に、シートを敷いて、途中で買ったパンを食べた。説明板によると、この桜は、何かの光線を当てて黄色い花を咲かせるようにしたものだとか(もちろん今は咲いていない)。
こういうのを見ると、なるほどここは研究施設なのだなと思う。もともとは幕府の薬草園。それがどうして東大の施設になったのか。誰か、ここを残そうとして必死に奔走した人でもいたのではないかと、勝手に想像してみる。
閉園時刻が近かったので、ちょっとの間ぼうっとしただけで、あまり歩けなかった。
ここは好きな場所。地下鉄を上手く使えば、そう遠くはないのだから、また来よう。
●5月11日(金)
昨夜8時頃、夫と一緒にごみを出しに表へ出た。用事を済ませて前庭でぼうっとしていると、夫が「猫がいる」と。見ると、植え込みの中を何かが歩いている。
でも、猫にしては大きい。犬だとしたら異常事態。
犬じゃない。平べったい。黄色い。
顔が見えた。
アナグマだ!
よく見て確かめようと追いかけたが、ひょいひょい走って、あっという間に道を渡り、行ってしまった。その道の先には緑地帯があり、公園という名の鬱蒼とした山へ続いている。きっとあの山に棲んでいるのだろう。あの山にはフクロウもいて、フクロウとアナグマとは食べ物が似ている。
驚いた。野生のアナグマを見たのは初めてだ。井の頭の動物園では見たと思うけど。
タヌキなら、千歳村でも見たし、こっちに来てからも公園で瀕死の子ダヌキを見たことがある。夫はタヌキと、ハクビシンらしき獣とを見たそうだ。
でも、アナグマは初めて。いるんだねえ。
なお、わたしは幼時から図鑑を絵本代わりに見ていたし、TVの動物番組〜ペットよりも野生動物を紹介するもの〜は今も大好きだ。だから、アナグマ、タヌキ、ハクビシン、アライグマ、レッサーパンダの区別は完全につく。日本にレッサーパンダはいないけどね。
うれしいな。野生のアナグマ見ちゃった。
月に三回は行く別の公園は、奥の方にはウサギがいるという話だ。
良い所に住んでいると、改めて思う。
●5月20日(日)
また、何かと遭遇した。ここのところ、動物運(?)がついている。
多摩ニュータウンは多摩丘陵を切り刻んで、計画的に造られているから公園も多い。
だだっ広いきれいな公園も多いが、丘陵のかけらに道をつけるなどの整備をした、山のような緑地や公園も多い。
昨日、そうした公園の一つでのこと。茂みががさがさと音を立てているから、画眉鳥でもいるのかな、それにしても派手な音だなとのぞきこむと、側溝の中に獣が見えた。え?と思う間もなく、ふたのある下に消えたしまった。
測ってみたら、側溝の幅は30センチ。明るい色でとがった顔だったが、この大きさならたぶんイタチだろう。
いろいろなものが、いるんだなあ。
そんなところに、いきなりコンクリで町を造ってしまったのは、申し訳ない気もする。
せめてこうしたかけらは、大事にしていかないと。