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多摩丘陵から 〜日記のようなもの      

 

2015年7月 14日 18日

 

●7月14日(火)

 「放っときゃ五年も十年も経つだろう」と、かつて牧野元氏が言っていたが、本当にそんな感じ。

 目の前にある「しなきゃいけないこと」を片付けているだけで、どんどん日が過ぎる。時々、そら恐ろしくなる。

 

 どうして日が過ぎるのか不思議だったので、何がどうなっているのか週末だけでも分からないかと、今年の1月から行動を大雑把に手帳に記している。

 そうして半年過ぎてみて、何か分かったかというと、やはり何だか分からない。

 清掃、近所のスーパーなどで日常の買い物、午睡、近隣を散歩。この繰り返しだ。

 それだけで、日はどんどん過ぎていく。

 

 

 散歩は必需なんだ。一人でも二人でもいいから、1時間でも2時間でも歩きたい。文字通り、気散じのために。

 これからの季節には難しいけれども。

 

 

 

 

 

●7月18日(土)

 買い物帰りに公園内の道を抜けていくと、道の先の方に小さな男の子と父親らしき人とがしゃがんでいるのが見えた。お父さんはすぐに立ち上がり、何かを探すように下を見ながら数歩離れた。この公園は、春から秋まで子どもたちがアメリカザリガニ釣りに興じる所で、もちろん虫も多く、大通りの歩道を立派なカブトムシが歩いているような土地だ。だから何かいるのだろうと、横目で見ながら通り過ぎよると、手の小指ほどもある大きな芋虫が見えた。と、残っていた男の子が、右手をぴんと高く挙げて、「虫がいます。気をつけてください!」

 「はい」と答えながら、声に出して笑ってしまった。三歳か四歳くらいだろうか。真剣な様子が、愛らしくてならない。

 確かに、踏んでしまったら、お互いにとって(踏んだ人も、踏まれた虫も)不幸なことになる。人通りの多い道で、わたしの後にも幾組か来ていたから、彼なりに危機感を覚えたのだろう。

 大事なものを大事に思い、大事にできる。こういうかわいい子が皆、そのまま真っ直ぐ大人になってくれたら。

 (お父さんは、芋虫さんを安全な場所に移すべく、木の枝か何かを探していたのかもしれない)

 

 夕方、別の公園で。

 水路の中にカルガモが、ボーリングのピンのように細長くなって突っ立ていた。どうしたの〜と言いながら通り過ぎようとしたら、カモの前にピヨピヨちゃんが2羽いた。この子たちを守るために、警戒していたのだ。親より先に歩いて水に飛び込み、流れに逆らって泳ぐ。

 ただ、2羽というのが気になる。2羽しか産まないわけないだろう。ネコもいるし、カラスもいるし、チョウゲンボウも目撃されているという公園だ。ボーリングのピンにもなるわけだ。

 

 

 

 

 

●7月31日(金)

 今朝5時、市の回収に出す段ボールを持っておもてに出たら、コンクリの塀に何かついているのが見えた。巨大蛾かなと思いながら近付くと、蝉の羽化だった。

 肌色の体に白く透ける羽。そのきれいさに、しばし見とれる。

 段ボールを置いてきて、再びちょっとながめてから家に戻ろうとすると、お出かけらしい男性が歩いてきた。「おはようございます」と挨拶して、「そこで蝉が羽化しているんです。きれいですよ」と指さすと、「朝、早いですからね」と。すれ違ってから改めて振り向くと、その人は蝉の前で立ち止まっていた。分かってもらえて、ちょっとうれしかった。

 それにしても、5時に出勤とは。始発に乗るのだろうか。どこまで行かれるのだろう。ここから都心まで、70〜80分くらい。接続が悪ければ、もっとかかるだろう。すごい所に住んでいるなと思うけれど、環境は良いからね。

 

歯医者だ、健診だと、バタバタしていたら7月ももう終わり。

世の中、なんだか騒がしい。

……鶴見俊輔、亡くなったのか。高齢なのは分かっていたけれど、ずっといたから、ずっといるような気がしていた……。

特にファンというわけではないけれど、感慨はある。

 

 

 

 

 

 

 

 

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