日記表紙へ

 

 

多摩丘陵から 〜日記のようなもの      

 

2012年11月 4日 11日 14日 18日

 

●11月4日(日)

   ああ 仮初の夢なら ない方がましさ

   どうせ険しい道なら お前と歩みたい

 

 「ズレてる方がいい」の出だしを改作してしまった。

 1行目は、どういうわけか本当にこう思い込んでいて、レコードを買って驚いた次第。2行目は、勘違いしていた詞に合わせて、でっちあげてみた。

 

 本物は、

   ああ 仮初のゆめでもないよりはましさ

   どうせ流す涙ならお前と流したい

 

 実は今も、「ない方がましさ」と「ないよりはましさ」との間で揺れている。どっちがかっこいいか? ということで。

 もちろん、思想的には前者の方がより「ロック」だ。20代の青年なら、迷わずこちらをとるだろう。後者は今ひとつ弱腰で、情けない感じがする。

 けれどもどうだ? エレカシのかっこよさというのは昔っから、不様さの中にあるのではないか? おのれの不様さを糊塗してかっこつけないこと、それどころかその不様さを突き詰めたその先にこそ生じる、そんなかっこよさがエレファントカシマシというバンドのかっこよさだったのではないか?

 そして、宮本はもう21歳の大学生ではない。46歳になり、身体のあちこちにガタがきているのを感じ、そしてこの曲を創ったときには既に変調も覚えていた。

 そういう年代の人間としては、「ない方がましさ」と言い切ってしまうよりも、「ないよりはましさ」と、なけなしの虚妄の夢のかけらにであってもいいから、すがってみたくもなる。

 それが本当だ。

 だから、このかっこ悪さをわたしは受け容れようと思う。

 

 今度のシングルは良かった。2曲とも良い曲だ。気に入った。

 30日にユニオンで買えなかった(通常盤は「売り切れです。メーカーの在庫次第なんでいつ入荷するか分かりません」)ときにはブチ切れたけどね。弾き語りヴァージョンは通常盤にしか入っていないから、音楽好きなら通常盤を買うに決まっている。限定盤のおまけのDVDなんて、曲よりも「宮本さん」の顔をながめるのが好きな、一部の酔狂なファンしか欲しくないだろうに、会社は限定盤の方を売りたいのだろう。

 待つ余裕はないので、翌日秋葉へ飛んでいって、いつの間にかエディオンになっていた石丸本店で購入したら、ポスターをくれた。断るのも何だから受け取ったが、こんな「耳なし芳一」、今となっては不祥に過ぎる。結局、丸めたまま一度も開いて見ていません。

 

 ともあれ、良い曲だ。今、映画の宣伝でTV各局で耳にする。その度につい音量を上げてしまう。

 

 

 

●11月11日(日)

 ツワブキが盛り。ケヤキが散り始め、桜並木が真っ赤。

 

 CDのおまけに握手券がついてくるのではなく、握手券のおまけにCDがついてくる時代……というようなことを、山下達郎が言っとった。

 

 1時間のDVDのために、欲しくもない「ベスト盤」を買わされると思うと、釈然としない。CDの内容がひどすぎる。冷静に考えればユニバになってからの曲にも、良い曲はたくさんあるのに、この「ベスト盤」は15曲中まともな曲は3曲だけじゃないか。このCDをプレイヤーにかけることは、絶対にないと断言できる。

 それでも買わなきゃいけないんだ。野音のDVDがあるから。

 本当はこれも、どうかと思う。それくらい、状態が悪かった。わたしは外聴きだったが、痛々しくて、聴いていて辛かった。チケット代返金というのも分かる。だからといって、入場したのに払い戻しさせる人たちの了見も謎だけれど。

 「心意気」。それだけだよね。

 「ズレてる方がいい」は気に入った。久しぶりに、歌詞を憶える気になった。今、憶えつつある。

 

 なお、宮本の病気は一部で言われているような突発性難聴ではなく、外リンパ瘻です。

 

 

 

●11月14日(水)

桜の紅葉が好きだと言ったら、夫に「通だね。普通は花でしょ」と言われた。でも、別にマイナー志向で奇を衒っているわけではない。単純に、桜は街道筋の並木として使われることが多いから、真っ赤なのがずっと続いているのがきれいだな、とそれだけのことだ。

 これが、「桜は虫がつくから葉が穴だらけになっている。真っ赤な葉に無数に空いた穴ごしに、青空を見るのが好きだ……」となると、やはりちょっと変だろうか。

 

 今日は陰暦十月一日。楊篤生生誕140年。十月何日か分からないので、とりあえず今日、お祝いしておく。

 

 何かのアンケートで、「歴史上の人物で会ってみたいのは誰?」というのがあった。歴史上に名を残すほどの人は、だいたいアクの強い人物だろうから、あまりお近づきになりたくない気がする。たいていが、厄介な人だろう。

 篤生だって、会ったら訊いてみたいことは山ほどあるが、お付きあいはしたくない。一度会っただけの孫逸仙は、彼のことを物腰の丁寧な人と書いているが、親しくなったらどんなものか。黄興さんの言う「思想縝密、有類精衛」、よく言えば緻密で遺漏がなく、非常に粘り強く努力する美点は、つまるところ、異常に細々しくて、ねちねちとしつっこい、ということでもある。妻子への手紙を読んでいると、細かさとしつこさとが全開で、近しく付きあうには難儀な人だと思う。

 そんなものです。

 

 

 

●11月18日(日)

 朝、散歩に行った公園でツグミを見た。今季初。千歳村で見たときは大騒ぎしたこの鳥は、こちらではムクドリなみに普通の鳥だが、今季初となれば見る目も違う。冬が来たんだねえと、改めて思う。

 ということで、今日は大車輪で冬支度。居間の床にじゅうたんを敷き、ついでにこたつも出した。窓に結露対策も施して、室内はすっかり冬仕様になった。

 

 冬は好き。星空が最も派手な季節だ。おまけに今は牡牛座に木星がいるものだから、にぎやかなことこの上ない。一等星だらけのところに、−2.8等星がまじっているのだから、壮観だ。

 今は明けのヴィーナスも美しい。

 冷えれば冷えるほど、星は冴える。

 

 

 

 

 

 

 

日記表紙へ